ボゴタ（ＣＮＮ）コロンビアは、コカインの主成分であるコカの成長を止めるために、遠隔地の農村部で有毒な化学物質の空中散布を再開したいと考えている。
この散布には通常、グリホサートという化学物質が使われている。この化学物質は、世界保健機関（ＷＨＯ）がガンとの関連性を指摘し、「おそらく人間には発ガン性がある」と分類している。
コロンビア政府は安全にできると主張しているが、批評家は危険で効果がないと主張している。
2015年には、当時の大統領フアン・マヌエル・サントス氏がこの行為を停止したが、彼の後継者であるイワン・ドゥケ大統領は、アメリカのドナルド・トランプ大統領の後押しを受けて、今、物議を醸している行為を再開するための許可を得るために、コロンビアの環境ライセンス機関の前での公聴会の開催を求めている。
ドゥケの政府は、コカイン作物を根絶することで、麻薬ギャングによる人身売買や暴力を制限することができると言っている。
コカインの生産量は現在、コロンビアでは過去最高を記録している。2017年の数字を基にした最新の国連薬物報告書によると、コロンビアは世界のコカイン生産量の約70％を生産しており、作柄は若干減少しているものの、実際には生産性が向上しているため、生産量は増加しているという。
コロンビアのカルロス・ホームズ・トルヒーヨ国防相は8月24日、「コカインは、最近の虐殺事件の背後にある犯罪グループの主要な収入源である」と述べた。
空中燻蒸を中断したことは「重大な誤り」であったと述べた。
有毒な霧
空中燻蒸によって、当局は手の届きにくい、危険な場所にある違法なコカイン作物を標的にすることが可能になった。
ドゥケ大統領の国家安全保障アドバイザーを務めるラファエルグアリン氏はCNNの取材に対し、今後の空中燻蒸は保護地域や国立公園では行わず、環境ライセンス当局が設定した範囲内でのみ機能することを約束したと述べている。
2018年までコカを栽培していたアンティオキアの農村部の農家、ホセ・ダビド・エルナンデス氏は、2003年と2004年の空中燻蒸を覚えている。
除草剤は有毒な霧のように畑に落ち、労働者の皮膚が出血し始めるほどの痛みを伴う刺激を引き起こしたと彼は言う。
最寄りの病院から何十マイルも離れた場所で、農家の人たちは、皮膚を漂白する職人技の軟膏を使って傷を治そうとしました。今日に至るまで、ヘルナンデス氏はCNNに、傷を治そうと軟膏を塗った腕や足に白い斑点ができていると語った。
グリホサートの危険性についての科学的な議論は現在も続いている。WHOはグリホサートをガンと結びつけているが、米国環境保護庁は「グリホサートが現行のラベルに従って使用されている場合、人の健康に懸念されるリスクはないと判断している」としている。
グリホサートを製造している米国のモンサント社は、使用者に個人用保護具の着用を推奨している。
しかし、コロンビアでは、除草剤は広大な土地に散布されることが多く、コカの世話をしている農家や近くで合法的な作物を栽培している他の人を含む、畑で働く労働者への警告なしに散布されていることが多い。
また、空中燻蒸の批判者は、地球上で最も生物学的に多様性の高い国の一つとみなされているこの国では、デリケートな植物へのダメージなど、発がんの可能性以外にもリスクがあると述べている。
エクアドルは２００８年、コロンビアが国境付近で行っている空中散布が自然環境に悪影響を与えているとして、国際司法裁判所に提訴した。裁判所はエクアドルを支持した。
複雑な政治の歴史
公衆衛生上の懸念は計算の一部に過ぎない。
ドゥケの反対派は、散布の再開を最悪の悪政と見ており、再開は2016年の内戦終結後の微妙なバランスを変えかねないと危惧している。
サントス氏の空中燻蒸禁止は政治的な要素が強かった。当時、彼の政府は極左ゲリラグループであるコロンビア革命軍（FARC）と交渉し、50年以上にわたってコロンビアを荒廃させてきた紛争に終止符を打つことを目指していた。
ＦＡＲＣは農村地域の大部分を支配し、コカイン取引で利益を得ていた。空中燻蒸作戦は、特にＦＡＲＣの中核的な戦力を標的にしていた。
最高裁は一年後、グリホサートが健康上のリスクがあると主張した先住民のコミュニティを支持する判決を下した。
コロンビア憲法裁判所（法律が憲法に準拠しているかどうかを判断する別の機関）は昨年、空中散布を再開するには政府がグリホサートの散布が安全であることを示す必要があるとし、その条件がいつ満たされたかを判断するのは環境ライセンスの権限に委ねた。
参照先：https://edition.cnn.com/2020/08/28/americas/colom